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「元気で長生きできる住まい」 2019.7

タイトル「住まいの知恵」 N0.30 2019年7月 設計工房CRESS 久米えみ

「元気で長生きできる住まい」

 今回から「元気で長生きできる住まい」という住まいの計画ポイントについて連続で書きたいと思います。

一般的に住宅を20代から30代の頃に新築で建設されて、その後20年〜25年後あたりで水回り等の入れ替えを考える時期が訪れます。そのようなタイミングで、住まいの他の不具合部分も合わせてリフォームまたはリノベーションする?という検討を多くの方はされます。この際に「健康で長生きする住まいの計画」をぜひ合わせて検討して欲しいと思います。

健康に長寿の大事な4つのポイントは、「メンタル(精神)」「運動」「食事」と「環境要素」になるそうです。そして4本の柱を支えている基盤は「住環境」になります。

住環境は温度、空気、光、風などの「環境要素」で構成されています。人はこれらの影響を受けながら生命活動を維持しています。もしこの環境が適切な状態で無くなると心身の不調・病気のリスクを高めかねない。その一方で4つの柱の中で、環境要素は、住まいの設計・建設で解決できるポイントになるということです。

住まいの中の事故死の多い季節は、12月から3月の冬に増加しています。場所は、浴室や脱衣室のヒートショックだけではなく、住まいの全体(トイレ・廊下・寝室)を見ても冬に増加しています。(表-1)また寒い家で命を落とす人は交通事故の4倍とも言われています。冬の寒さ対策を考えることが、住まいの事故(死亡)防止につながると言えます。

(表-1) 日本公衆衛生学会2009出典


□健康は断熱性能に関係する

 住まいの冬季の寒さ対策基準として、理想値は、断熱性能(Q値)を1.9程度以下に抑えることを目指したい。(表-2) 「省エネグレード別比較表」平成25年建設物省エネ基準

(表-2) 「省エネグレード別比較表」平成25年建設物省エネ基準

こちらの (図-1)は、戸建住宅における断熱ランク別に病気の諸症状改善率の実態調査結果になります。高断熱住宅でアレルギーがなぜ改善するかといえば、「結露」が無くなるからで結露がなくなればカビが発生しなくなり、ダニもいなくなるからです。高血圧が改善するのは抹消血管が広がり血圧が安定するため。糖尿廟が改善するのは、住まいが暖かくなることで体温が上がり循環が良くなるからです。住まいの断熱性能を向上させることで温熱環境が改善されると、病気になる人が減少することは明らかです。改修前と改修後(断熱)を自己申告による調査結果のため医学的な証拠には相当しませんが、かなり普遍的な現象と統計結果から読み取れます。(図-1) (図-1) 環境工学委員会出典 2013年


室温による健康障害の研究が進んでいるイギリスでは、推奨温度は21℃、許容温度は18℃という指針を国が示しています。(表-3)また一定条件を満たしていないアパートの大家には強制的に断熱改修をしてもらうなど公的責任で健康支援環境を整備する取り組みを義務付けています。日本の住まいは冬場の朝の室温が10℃以下の住宅がまだ多い中、イギリスの基準にまで引き上げていきたいと考えます。またこれまでの住まいの高性能化は、地球温暖化防止や省エネ促進が目的でしたが、暖かい住まいに改善することは、健康で長生きすることにつながると立証されています。 (図-2) HHSRS イギリス住宅法の一部

(図-2)


□温熱環境リフォームは窓の性能アップから

 窓ガラス(サッシュ)には性能の異なる多くの種類があります。その一つで現在主流の「複層ガラス」(図-3樹脂窓)は2枚のガラスで、間に6ミリから12ミリまでの空気層を挟んだ構造です。この空気層が窓ガラスの断熱性能を格段にアップさせます。どのくらい効果に違いがあるかを比較すると

A:単板ガラス B:複層ガラス(空気層6ミリ) C:Low-E複層ガラス(空気層12ミリ)

窓ガラスの性能の違いによって室温20℃でそれぞれのガラス表面温度が

A:単板ガラス表面温度2℃  →  体感温度 11℃

B:複層ガラス(空気層6ミリ) 表面温度12℃  → 体感温度 16℃

C:Low-E複層ガラス(空気層12ミリ) 表面温度18℃  → 体感温度 19℃

AとCでは 体感温度に8℃の差が生じます。

□水回りのリフォームに合わせて、窓の断熱性能をアップさせた温熱環境改修工事の例

 築25年 戸建て住宅  改修費 約500万

・キッチンとトイレの機器の入れ替え 

・1階の単板ガラスをLow-E複層ガラス(空気層12ミリ)樹脂窓に入れ替え

・キッチンの入れ替えに伴い吊り戸棚を外してオープンキッチンにする。

 上記のリフォームの結果リフォーム後の光熱費(表-3)は3割も削減できました。1階のみの窓部分の性能アップにかかった投資額は約80万。それによる光熱費の削減費は年間約6万ですが、このことにより今後のセカンドライフでの疾病(高血圧・糖尿病・循環器系疾患 他)などにかからない健康な生活が手に入ると考えると、かなりの医療費削減につながります。

(表-3)


またリフォーム後の住まいでは、暖房機の設定温度が以前は24℃ぐらいに設定しないと寒かった住まいが、リフォーム後は20℃でも暖かく感じるようになりました。

この例のように窓のみの改修でも温熱環境の向上と ランニングコストの削減につながります。住まいの断熱・気密のリフォームには大まかに3つの対応レベルがあります。

A 開口部(窓)のみ強化する (工事費目安50万〜150万)

 ⓵既存サッシュを生かしてガラスだけ交換する。(50〜70万)

 ⓶開口部(サッシュ)全てを改善する。(100〜150万)

 ⓷既存サッシュを残し、その内側に新しい樹脂サッシュを取り付ける。(100万)

(図-3)樹脂窓

B 窓の改善+天井と床の断熱材を強化する

 費用はAの3倍〜4倍(300万〜400万)

C 構造のみ残して既存建物をスケルトンにし新築と同等の断熱・気密強化する。

 費用は規模にもよりますが、目安として1000万〜1500万)

*A〜Cの費用の基準は2階建 30〜35坪の戸建て住宅


樹脂窓


Cのレベルまで高気密・高断熱リフォームができれば、健康で快適な住まいの温熱環境レベルは最高ランクで手に入ります。(表-3) Q値1.9

このような住まいの温熱環境をアップすることは、健康だけではなく、人生の幸福感とも密接に関連します。夏は暑く・冬は寒い住まいから、年間快適な住まいに変わり 住まいのどこも温度差がなくなる事で、ストレスがなくなり、身体がとても楽になります。そうしたことが穏やかな安心感と幸福感が湧き上がる生活になります。

まずは セカンドステージに向けてのリフォーム時には、ぜひ最初に断熱リフォームで温環境の向上を目指してください。皆様の健康で豊かな人生への大きな投資になります。

     設計工房クレス 一級建築士久米えみ