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「既存建物をどう活用する」 2018.10

最終更新: 2019年7月4日

 前回から引き続き「既存建物をどう活用する」ということを真剣に考える時代ということで、今回は既存建物をリフォームして「終の棲家」を検討したお客様の建設ポイントや建物の計画図面を紹介致します。

多くの方が、住宅を20代から30代の頃に新築で取得されて、その後20年〜30年後あたりで水回りの入れ替えを考えなければならない時期に、住宅全体をリフォーム・リノベションするか?またはこの機会に建て替えてしまうか?という検討をされています。今回は退職後のタイミングで夫婦二人の「終の棲家」を検討していたU様邸で作成した比較表(表-1)をまずご覧ください。


(表-1)



比較表のポイント部分について説明いたします。


① は毎年長野県では新築・リフォームの補助金制度があります。長野県のHP「環境配慮型住宅助成金」という項目で調べられます。今回新築は上半期で予算いっぱいになってしまいリフォーム枠なら申し込可能でした。リフォーム補助金のmaxは50万です。https://www.pref.nagano.lg.jp/kenchiku/kankyohairyo.html

太陽光の項目は、既存リフォームの延べ床面積が新築計画より広いため、屋根に乗る太陽光パネルの枚数が多いことがメリットでした。

② は新築と比較してメリットとして考えられることを複数挙げています。特に言えることは長年暮らしてきた住まいは、今まで暮らしてどんなことが不便だったか?の問題点をお客様が把握していることが重要になります。リフォーム・リノベーションの時にその問題点について建築士に検討してもらうことができます。新築住宅の場合と比較しても長年の暮らしの中で本人または家族が気になったことを具体的な要望であげてもらえることは大変有利な点で、特に高齢者になってからの住まいの中ではそうしたストレスを解消してあげることも「終の棲家」として理想になります。

それと大きな利点として減価償却している既存建物は税金の部分で有利なことが多いことです。また(表-2)の固定資産税の軽減措置もあります。

このようにリフォーム工事にすることのメリットは沢山あります。

③ 逆に地耐力については新築工事でしか手を入れられないメリットになります。計画敷地がジメジメしていて湿気が多く、地盤が不安定な場合は、リフォームより新築工事をお勧めいたします。今回の敷地は地耐力については、長年地震で大きく揺れたこともないとのことだったのでリフォームの方向で提案しました。また不安な場合は敷地内の3ポイント程度の地耐力測定を実施して検討することをお勧めします。

このようにどちらにするのかを検討するときに上記のような比較表を作成して大事なポイントを押さえていくと明確になります。


(表-2) 税金の軽減


次にリフォームのご要望の中で特に多く出てくるポイントは以下の4点です

1 夏涼しく冬は暖かく快適に過ごしたい 夏は上層階が熱く、冬は下層階が寒い等、住居の温熱環境を改善したい

2 室内の湿気を解消したい 風通しが悪く、湿気でカビが発生してしまう部屋があるため、リフォームで改善して欲しい

3 家の中の段差を解消したい 段差が多い建物なため、この先のことを考えて間取りの変更およびバリアフリー化をしたい

4 地震に強い家にしたい 地震の際にかなり揺れて心配、耐震補強をして安心して暮らせる建物にしたい

上記の問題点を改善するために、以下のようなリフォーム提案になります。

① 建物の断熱性能をアップして、夏も冬も快適に

② 建物の中に湿気をためない通気工法や湿気対策(防湿コンクリート、断熱サッシ等)の提案をする

③ 生活スタイルに合わせた間取りの変更や、床高さの確認、動線の確認

④ リフォームの際に構造を見直して、地震に強い家に補強するまた建物を軽量化のための屋根材の変更や減築をする (図-1)


(図-1)


上記のポイントを踏まえた具体的な「終の棲家」提案をご案内致します。


こちらのお宅(U邸)は、築45年の在来木造住宅。ご主人の両親を見送り、二人のお子様もそれぞれ嫁がれ、また長年単身赴任で県外に行かれていたご主人が定年退職となり夫婦二人でこれから老後に向けて暮らすことになりました。そこで今回のような建て替えにするか。既存住宅のリフォームにするかで悩まれていたので表-1の比較表より内容を検討した結果で私はリノベーション計画で提案をしました。



(図-2)


既存木造の図面(確認申請書)を拝見したところ、基礎に鉄筋が入っていることや、建設時の耐震検討もきちんとされている。また既存の床下部を現地確認したところ土台等の傷みもなく構造体の状態が良いことが分かりました。そこで30年前に増築した二階部分(緑部分)を解体撤去して平家にし(上部を軽くする)、なおかつ一階の東側の一部屋(ピンク部分)を解体することにしました。 これは近くに嫁いだ娘さんが頻繁にお孫さんを連れて遊びに来ることで、敷地内にもう一台駐車スペースが欲しいこと、また玄関までのスロープの確保のための減築計画になります。(図-2)

(図-3)


提案1階図面をご覧ください。(図-3)

U邸はご夫婦二人の「終の棲家」です。道路側には、既存の水回りの場所に新設の最新式住宅設備機器を設置します(省エネ)。ポイントは洗濯機をキッチンと洗面所の中間におけるようにしたことです。これは洗濯機までの動線を短縮すること、寝室から洗濯物を洗濯機に投げ入れられる小窓(B)をつけたこと。この二点からこの位置に設置できるようにしました。

リビングダイニングのスペースはワンルームにして以前より広々と使える空間にしました。

また既存の玄関スペースに食品庫を兼ねた納戸(C)にしました。キッチンから近く既存の玄関扉も再利用できます。収納については、玄関周りで収納したい物にはシューズクロゼット

・リビングキッチン周りに収納したい物・衣類関係は寝室に、WIC(ウォークインクロゼット)設置しジャンルごとの収納スペースを3箇所に分けて配置しました。(黄色の部分)

既存8畳の仏間兼客間についてはできるだけ既存のままで手を入れず使用する。(費用削減)そのため既存和室とリノベーションするキッチン・リビングとの室内壁部分に断熱材を充填し、断熱化するエリアが閉じるようにします。 (省エネ)

ご夫婦の寝室は起床・就寝時間がそれぞれ異なることや煩わしくない距離の確保というご要望が出ていたので、微妙な距離感が保てる別寝室空間を計画しました。このポイントも重要です。

奥様が数年前から家庭菜園に力を入れていることをお聞きしたので、リビングダイニングと庭の一体感を醸成する中間領域(テラスデッキ)を確保しました。(図-4)また広いテラスデッキは、今後お孫さん達との休日のバーベキューやハンモックで昼寝をする。などいろいろなシーンへの活用につながればと計画しました。

(図-4) 庭からリビングダイニング眺めたパース図


最後に予算内で既存住宅を活かして良質な住宅にするためのリフォーム計画のポイント (性能向上4ポイント)は下記の4項目です。

●耐震性能向上

●省エネルギー性能向上

●バリアフリー性能向上

●耐久性能向上(劣化対策・建設後のメンテナンス)

このポイントをクリアーすることで住まいの価値を上げ長寿命化につながります。

U様邸では、

建物の壁量計算を新たに検討し、耐震性能を向上させるために必要な壁部分については金物設置及び構造用合板の下地に入れ替える。(耐震性能向上)

外壁部分について、既存外壁の外に断熱材付きサイディング貼りにし、開口部は断熱サッシに取り替える。床下には防湿コンクリートを打ち、床と天井の断熱材を新規で入れ直します。(省エネルギー性能向上)

そして外部からのアプローチの段差と内部の段差は全て解消する。(バリアフリー性能向上)

以上のようなリノベーション計画を提案しました。

今回の終の棲家は、既存建物を活用するケースですが、このリノベーションした住まいも今後相続が発生する時点で売却か、別な活用方法を検討する時がきます。どうすれば有利に相続できるのかなど転ばぬ先の杖として専門家と十分に時間をかけて検討することは無駄ではありません。次世代に良い引き継ぎをするためにも早めに準備を進めましょう。

設計工房CRESS 久米えみ